カフェで見る景色(アーカイブ)

カフェを愛する編集者・こんどうみきさんが中部地域のカフェをご紹介

時代や喧騒を忘れて
古びた魅力に浸る幸せ
テンリュウ堂(長野県飯田市)

January 30. 2023(Mon.)

のどかな天龍峡に
よく似合う空気感

天竜川の浸食によって造り出された峡谷で、美しい景観を楽しめる天龍峡。昭和初期には、川下りが人気でとても栄えたとか。その当時、駅前に移築された元土産物店が今回の目的地。

一見、カフェと分かりづらいけれど、足を踏み入れると風情あるレトロな世界が広がり、心地いい時間を確信した。柱や天井をそのまま生かした築80年以上の建物に、センスのいい什器や地元の作り手による作品がそっと彩りを添えていて、新旧のバランスが魅力的。

明度を落とした奥の空間にも惹かれながら、通りを眺められる窓際席を選び、唯一の食事メニューである「こよみごはん」を注文した。季節の移ろいとともに内容が変化していくという、まさに今だけの料理。無農薬野菜は近くの農家から仕入れ、選べるメインの肉も魚も信州産と、はるばる訪ねた土地の素材を存分に味わえるのが嬉しくて、ひと口ずつおいしさを噛み締めた。焼きたてのアップルパイに使われた紅玉も、フルーツティーの茶葉も、近隣で採れたものだそう。

旬の味覚に舌鼓を打ちつつ、ゆったりと遠い時代に想いを馳せるひとときは、心身の疲れが消えるほど幸福だった。店主が替わるシェアリングカフェの日も気になるし、四季折々の景色にも温泉にも浸りたいし……、次は泊まりで訪ねようと妄想を楽しみながら帰路についた。

この地の旬素材が丁寧に調理された「こよみごはん」。
オープンから14時まで注文できる。
裏庭を眺められる特等席。小学校から
譲ってもらったという椅子も大切に使われている。
地元の人たちからも観光客からも愛されている場所。
ちなみに天龍峡は、国指定の“名勝“でもある。
かつての土産物店の名が「天竜堂」だったそう。
ノスタルジックな街並みに溶け込む。

店舗情報

テンリュウ堂
2019年にカフェとして再生。季節の食事とおやつの他、
自家焙煎コーヒーや天龍村で栽培された紅茶、
自家製コーラなどドリンクも充実している。

MAP

〒399-2431長野県飯田市川路4919
電話番号:0265-55-2052
最新の店舗情報はInstagramより。
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