自分時間(アーカイブ)

余暇を充実させるための新たな視点をビジュアルとエッセイでご提案

余白を楽しむということ。上田電鉄別所線で味わう旅の醍醐味

January 25. 2023(Wed.)

ちょっとした自由時間や余暇は、予定を詰め込んだり、あくせくしたりせず、じっくりと自分を見つめ直す時間に。今まで知らなかった地域をめぐったり、一人で趣味を楽しんだりすると、ちょっとした発見や感動に出会えるかもしれない。

今回は、長野県上田市へローカル鉄道の旅へ。ふと思い立って、上田電鉄別所線に乗り込んだ。

浅葱色の駅舎は別所線風景の特長。

真田氏のお膝元で
ふらり鉄道旅へ

旅に出ると、地域それぞれの良さがあることに気付く。道に並ぶ街灯、なんでもない民家、その間の路地裏……。街歩きはいつだって楽しいけれど、旅先だといつも以上に新鮮だ。でも歩くだけじゃもったいない。その地域で愛され、今も走り続けるローカル線に乗るのはどうだろう。

長野県上田市。真田氏が築城した上田城の城下町があり、千曲川が流れ、上田盆地が広がるエリア。上田駅周辺にはパン屋や珈琲屋、本屋などたくさんの店が集まっている。日中の空いた時間は、駅周辺でも散策してゆっくりするのも良いが、せっかくだから、上田電鉄別所線に乗ってみることにした。

上田駅から別所温泉駅行きに乗って。

始発駅となる上田駅から乗車。途中赤い鉄橋の千曲川橋梁を見て、終点の別所温泉駅でお昼を食べて、温泉街を散策しよう。そんな予定を立てていた。

しかし電車は1時間に1本で、すぐには来ない。

「まあ、焦る必要は全くない」と自分に言い聞かせて、のんびり待って、上田駅から電車に乗った。

朱色が映える千曲川橋梁を別所線が駆け抜ける。

かつてはこの上田盆地で縦横無尽に張りめぐらされ、全長57.2キロメートルに及んだ鉄路も、今やこの別所線11.6キロメートルを残すのみ。上田駅から別所温泉までを結ぶ鉄道は、約30分の距離だ。

住宅街の間を車両がゆっくりと進む。
長野らしいりんごの木が見える。

民家スレスレの距離で電車は駆け抜け、視界が開けて見えたのは広大な畑、その奥には色づいた山々。上田盆地を感じさせる風景だった。

畑の中にポツンと佇む舞田駅。

心地よい秋風が吹く11月。

車窓を眺めていたら、浅葱色の八木沢駅が見えた。美しい駅舎に誘われて、途中下車。

浅葱色が美しい八木沢駅。

駅の近くには何もない。次の電車まで約50分。待ちきれなくなって、近くの畑の畦道を歩いてみた。朽葉色の畑の周りには、秋の花が鮮やかに美しく咲いていた。

八木沢駅から舞田駅までは、四方を山々が囲み、
畦道が真っ直ぐと伸びている。

迎えた電車に乗って、ゆっくりと進んで、ようやく終着駅の別所温泉駅に到着。ここも、浅葱色が鮮やか。平日だが、観光客の姿も見えた。

終着駅の別所温泉駅に到着。
駅には観光案内所が併設されている。

駅から西へ向かうとすぐ温泉街が広がる。道沿いや北向観音(きたむきかんのん)へと続く参道などに旅館や土産店、食事処が並び、温泉街の風情を満喫できる。
昼食には、上田名物「馬肉うどん」をいただいた。

別所温泉街には、飲食店や宿、土産店が多い。
奥に見えるのが北向観音。参道にさまざまな店が並ぶ。

食事をとって、そこから次の目的地に行くにも電車はまだ来ない。次の電車が来るのは40分後。

舌喰池(したくいいけ)。上田盆地は降水量が少ないことから、ため池が多い。

のんびり待つのも旅の醍醐味の一つだ。期せずして生まれた余白に、喜びや驚きにあふれた経験が待っていることもあるだろう。そのような余白を楽しむことが、旅を豊かなものにしてくれるのかもしれない。

別所線の車両によっては、かわいらしい丸窓がある。

そう思えば、待つことだって楽しくなってきた。

次の電車が来るまでの間、思わずスマホに手が伸びそうになったが、せっかくの贅沢な時間だ。ローカル線に身を委ねるこの時間を大切にしよう。

MAP

上田電鉄別所線
電話番号:上田駅 TEL/0268-22-3612(8:00〜20:00)
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